コラム~診察の現場より【乳がん】【性感染症】
乳がん豆知識
Q)乳がんって?
A)乳がんの怖さについては最近テレビCMやマスコミでも取り上げられる機会も多くなり、気にされている人も多いでしょう。確かに乳がんは女性の長寿化の時代の流れに逆らうかのように日本人女性の中で急増しています。もともと乳がんは欧米では女性8人に1人といわれる高い罹患率ですが、日本人では12年前までは30人に1人と言われていましたが、最近のデータでは11人に1人と著しく増加しています。これは人種差,遺伝因子および食習慣の違いによるものと考えられています。日本人の食習慣の欧米化が日本人の乳がんの増加の原因になっていることは十分納得できますね。 現在乳がんの患者さんは日本で約7万人といわれ、さらに1年間に乳がんで亡くなる人の数は1万4000人近くに達しようとしています。女性全体の癌の罹患率では胃がんを抜いてトップですし、特に35歳から65歳ぐらいの壮年女性の死因でも第1位です。(実は欧米の乳がんは50から70歳代にかけて罹患率が増えていくのに比べ、日本人は30代後半から40歳台にその罹患のピークを迎えるとい特徴もあります。)まさかそんなに若く癌になるはずがないとか子育てやキャリアの中でなかなか病院に受診する機会がないことも発見が遅れるという悲劇の理由になるわけです。 ただしほかの癌と違って乳がんというのは自分で触れるところにしこりができるわけですから早期に発見も可能ですし、実際に早期発見すれば特殊な型の癌をのぞいては決して死ぬ病気ではなく、Ⅰ期(腫瘍の直径が2cmまででリンパ節転移なし)の場合5年生存率、10年生存率というのもほかの部位の癌に比べて決して悪くなく80-90%以上が期待できます。また早期発見により乳房温存(乳房の形を残す)手術が可能ともなります。
Q)乳がんはどうやって見つけるの?
A)このへんで自分は大丈夫かしらとだんだん心配になってきた人はまず自己視触診(自分でおっぱいを見て触る)を習慣づけましょう。生理のある人は生理前の乳房の張りやすい時期は避けて触ってみてください。まずは左右の乳房が対称かどうか鏡に映してみてください。それから乳頭の先をつまんで汁のようなものが出ないかも見てください。(明らかに白っぽくて乳汁様のものはOKです。)それから乳房全体を触ってみてください。触ったときに片方の乳房にしこりを感じた人は反対側も触ってほぼ同じ場所にしこりを触ればそれは異常ではありません。触った感じではしこりがあるのかないのかわからない人は一度受診して勉強してください。 それから触った限りでは何もないと自信がある人でも、触って発見できない腫瘍もあるので、乳房超音波検査(エコー)または乳房レントゲン検査(マンモグラフィー)をぜひ受けてください。一般に触診で発見できる癌が70%ぐらい、マンモグラフィー単独で75%ぐらい、触診とエコー検査、マンモグラフィーすべて行うと95%ぐらいと言われています。特に近親者(お母さん、姉妹、おばあさん、おばさん)に乳がんになった人がいる場合はできれば20台、30台ではエコー検査、40台以上の人はマンモグラフィー検査が適当です。それ以外でも閉経が55歳以上の人、肥満傾向の人、更年期でホルモン補充療法を行っている人などは乳がんのリスク因子ありとして1年に1回ぐらいのそれぞれの検診をお勧めします。またどれにも当てはまらない人も自己触診はもちろんですが、子宮がんなどと同様、定期的に(2年ごとぐらい)には検診するほうが安心でしょう。 当院ではH17年11月よりマンモグラフィー検査が可能になりましたので、予約制でそれぞれの検査を行っています。(所要時間はおよそ20-30分です。)お電話で気軽にご予約ください。
放っておくと怖~い性感染症について
性感染症とはセックスでうつる病気のことです。
病原微生物の種類は小さなものはウイルスと呼ばれ、単純ヘルペスウイルス、B型肝炎、C型肝炎ウイルス、HIV(エイズ)ウイルス、パピローマウイルス(これの良性のタイプはコンジローマ、悪性なら子宮頸がんを引き起こします)などがあり、次にリケッチャと呼ばれる種族ではクラミジア、細菌では淋菌、スピロヘータでは梅毒、原虫ではトリコモナス、虫レベルでは毛じらみなどが代表的です。
白い酒かすかヨーグルト様の帯下(おりもの)が特徴で、よく外陰部の強い掻痒感を起こすカンディダ(真菌)も広い意味ではセックスでうつる病気の中に入れる人もいますが、これは肛門周囲では常在していることも多く、よっぽどひどい状態でセックスしなければ相手からかかることは少ないと考えられます。カンディダ膣炎、外陰炎は妊娠中や糖尿病があると特にかかりやすいことも知られています。
時々これらの性感染症を心配して来られる人がいますが、思い当たることがあって来る人、パートナーまたは自分に症状があって来る人、なんとなく調べておきたくて来る人などさまざまです。検査は局所(帯下や外陰部の病変)から病原微生物を直接採取する方法と、血液で感染していることの直接または間接的結果を調べる方法に大きく別れます。
性感染症に共通して言えることは、ひとつの病気にかかると、ほかの感染症にも数倍かかりやすくなるので、早くちゃんと直すこと、それと、これらの病気は必ずパートナーと一緒に治さなければ、また感染を繰り返すことになりますよ。
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